本研究は血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症およびその関連疾患を対象とする。これらの疾患には長期にわたり患者のQOLを深刻に損なう多くの難治性の病態が含まれる。本研究班は平成21-23年度難治性血管腫・血管奇形研究班(佐々木班)、平成24-25年度同研究班(三村班)、平成21-23年リンパ管腫研究班(藤野班)、平成24-25年度リンパ管腫症研究班(小関班)、平成24-25年度小児期からの消化器系希少難治性疾患研究班(田口班)の分担研究である腹部リンパ管腫研究、肝血管腫・血管奇形研究を発展させ、相互に協力して疾患概念を形成し、患者に貢献することを目的とする。
佐々木班・三村班はISSVA分類をふまえて血管奇形・リンパ管奇形・混合型奇形についての研究を進めており、血管腫・血管奇形診療ガイドライン・重症度分類・診断基準作成、疫学調査を行ってきた。血管腫・血管奇形診療ガイドラインは日本形成外科学会・日本IVR学会と共同作成であり、完成し公表されているが、改訂して皮膚科学会・小児外科学会等の承認を受けることを目標とする。診断基準については国際的な基準が無いが、研究班のコンセンサスとして作成され、日本形成外科学会・日本IVR学会に承認された。重症度分類は作成されたが、三村班で行われた疫学調査の結果により、検証とブラッシュアップを行う。また、新生児・乳児の肝血管腫・血管奇形には極めて急速に生命の危機となる重篤な症例があり、速やかで正確な診断と治療が求められる。
過去の調査研究を継続総括し診療ガイドラインを作成する必要があり、当班では既に、MINDSガイドラインセンターの手引きにより2013年、改訂版を2017年作成発行し関連学会からの承認を経て、研究班のホームページ上に公開している。尚、2017年度版は、英文誌3誌に同時にオンライン掲載し、広く世界に活動報告・啓発・普及した。更に、令和3年度末を目標に“第二次改訂”診療ガイドライン発行に向けて、統括委員会、作成グループ、システマティックレビュー チームを整備・構成し、着手している。
本研究における症例登録(レジストリ)はAMED支援 難病プラットフォーム(RADDAR-J)の連携のもとに、令和元年までに代表施設で176名分の標準項目、準標準項目(RADDAR-J共通項目)及び当班独自の追加項目と入力しており、令和元年研究分担班施設(13施設中10施設)(1月24日 現在)でも中央倫理審査の下実施可能としている。令和2年度からは、RADDAR-J完全準拠の当班独自のレジストリ構築開始し、研究者及びキュレーター(データ入力者)が2次加工(データクレンジング)、3次加工(データ結合)が可能化し、データ解析を容易化せしめる。更に既存レジストリとの照合を図っている。
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群について循環器疾患であるが、小児期発症でかつトランジション医療対応も必要であるため、特に関連研究班とも連携する。また、治療開発においてはAMED小関班、尾崎班との連携を予定する。
先天性リンパ管疾患には異なる病態の疾患が混同され、診断・治療を困難にしている。またISSVA分類による脈管疾患のリンパ管奇形分類との整合性を図ることも大きな課題であり、これらを整理し、診断基準・診療ガイドラインを作成する。藤野班ではリンパ管腫の全国調査が行われ、診断基準(案)、重症・難治性度診断基準(案)が作成された。小関班ではリンパ管腫症の全国調査が行われた。リンパ管腫及びリンパ管腫症は異なる病態を示すものの病理学的には鑑別出来ず、確定診断が困難な状態であったが、先の調査研究により全国調査がなされそれぞれの診断基準(案)が作成されるに到っている。
今後関連各学会、患者団体の意見を統合して提言し、広く医学会・社会の認知を得ることを目的とする。